ファンパーク

「サッカー人生で最大の試練」は大学時代に訪れた。
しかし、それに屈することなく、これまで以上に努力を重ねた結果、
海を渡った日本の地でプロ入りのチャンスをつかんだ。
「あの時」の経験と恩師からの言葉を胸に刻み、
今日もチョン ウヨンは「より高いレベル」を求めている。

ブラジルのロナウドに憧れFWとして活躍した少年時代

 幼少の頃から、4歳上の兄の後ろを付いて回っていたこともあり、兄に倣ってサッカーボールを蹴り始めたのも自然なことだった。当時、夢中になったのはブラジル代表のFWロナウド。父親からもらったワールドカップのゴール集のDVDを観て、虜になった。

「DVDで観たロナウドのプレーに憧れ、彼のプレーを真似ることから僕のサッカーはスタートしました。その後、成長していく過程ではロナウドから(デイヴィッド)ベッカム、(ジネディーヌ)ジダンへと好きな選手が変わっていったけど、ロナウドはずっと僕の英雄でした」

 小学生になっても、近所に住む友達や兄とボールを蹴るばかりで、チームに所属することはなかった。彼の通っていた小学校にはサッカーチームがなかったからだ。ところが、ある日のこと。遊びでサッカーをしていると、同じ蔚山(ウルサン)市内にある江南(カンナム)小学校のコーチ兼スカウトから声を掛けられた。
「君はチームに入ってサッカーをしたくないのか?」
「もちろん、したいです」

 すると、そのコーチは翌日から1週間、学校が終わる時間になるとウヨンを車で迎えに来ては、江南小学校の練習に連れて行ってくれたそうだ。大きなピッチで、たくさんの仲間とともにボールを蹴るのは楽しく、彼はますますサッカーにのめり込んでいった。

「最初は親に内緒で江南小の練習に参加していたら、帰宅が遅い僕を心配した母から『あなたは毎日、どこで遊んでいるの?』と問い詰められて(笑)。他の学校でサッカーをしていることを白状したら、母親が練習を観に来たんです。そしたら僕があまりにも楽しそうにサッカーをしていたこともあって『頑張ってやってみなさい』と。結果、チームに正式に入部することができました。ただ、僕の小学校から江南小までは車で20分強もかかりましたからね。僕を誘ってくれたコーチが毎日、送り迎えをしてくれなければ、サッカーを続けることは難しかっただけに、今でも感謝しています」

 ロナウドのプレーを観て育ったせいか、小学生時代は点取り屋だった。センターフォワードのみならず、足の速さを買われてウイングなどを預かることも多く、またチーム内ではずば抜けてうまかったことから、常に中心選手として活躍した。小学5年生時にはチーム事情から内串(ネファン)小学校のサッカーチームに籍を移したが、全国大会のタイトルを総なめにするほどの強豪校として知られた同校でもそれは変わらず。その証拠に彼は全国大会でもMVPに輝くなど結果を残し、卒業後は地元の蔚山鶴城(ウルサンハクソン)中学に進学する。蔚山にはプロサッカーチーム、蔚山現代のジュニアユースチームも存在したが、同チームがあまり強くなかったことや、同中学に進学すれば自動的に蔚山鶴城高校に進学できることから学校の部活動を選択した。

 中学生になってからも、技術やスピードの面では他の選手より長けていたが、身長や体重が伸び悩んだことや、監督の「今の体格でサイドを突破したり、前線で体を張るのは難しいんじゃないか」という考えから、トップ下にコンバート。ロナウドに憧れた彼としてはその事実に多少なりともショックを受けたが、徐々にトップ下でのプレーを楽しめるようになり、存在感を示していく。それは蔚山鶴城高校に進学後も変わらず、全国で常にトップ10に入る同校でも中心選手として活躍を続けた。

 ところで、コンプレックスだった『体格』だが、高校入学時に163センチしかなかった身長は、高校2年で173センチに。さらに高校3年で182センチになるなど、3年間で20センチ近くも伸びたとか。だが、今度はその成長に体重が追いつかず、「ガリガリでアンバランスな体型になり、スピードもどんどん落ちていった」と本人。それもあり、周囲からは『技術とプレー感覚には長けているが、スピードや強さのない選手』といった評価をされていたそうだ。それでも、監督には「ウヨンの長所を生かしてプレーしてくれればいい」と言われていたことや、チームとしても彼の長所を生かすサッカーをしていたこともあり、ゴールやアシストといったフィニッシュに絡むプレーで存在感を発揮。とはいえ、彼自身は「このままの自分ではプロでは通用しない」と自覚していたこともあって、卒業後は慶熙(キョンヒ)大学に進学した。

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.17[NOV.2014]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.17[NOV.2014]
  • 「今月の男:チョンウヨン」(チョンウヨン選手特集)
  • 田代編集長のレンタルルーム IN THE ROOM~シュンキの部屋
    (高橋峻希選手が石津大介選手をゲストに迎えた対談)
  • ヴィッセル神戸×神戸女子大学(山本海人&杉浦恭平)
  • ヴィッセル神戸×株式会社ヤナセ(小川慶治朗&松村亮)
  • 相馬崇人の欧州蹴球探訪
  • あの人は今(第7回:エメルソン・トーメ氏) など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

チョン ウヨン

Profile
チョン ウヨン
巧みなポジショニングに加え、ビルドアップ能力も高く、パス回しの潤滑油となる大型ボランチ。2012年のロンドン五輪韓国代表で銅メダルを獲得した実績も持ち、温和そうな表情ながらピッチでは闘志を前面に出す。キックの精度も高く、セットプレーのキッカーとして得点に絡むプレーでもチームに貢献できる選手。
1989年12月14日生まれ、大韓民国 蔚山広域市出身、186cm/78kg