ファンパーク

「サッカー人生で初めて」と語るほど、ケガに悩まされた今シーズン。
大きな期待を背負っていただけに、悔しさや無念を強く胸に宿していたことだろう。
だが、まだシーズンは終わってはいない。終わるわけにはいかない。
誰よりもタイトル、そしてサッカーに対する“覚悟”の大切さを知る安田理大が、
シーズンの最終局面で厳しく、力強くヴィッセルを牽引する。

ポテンシャルは発揮できなければ、持っていないのと同じ

―ヴィッセル神戸に加入して、あっという間に9カ月が過ぎました。 「僕、生まれは大阪ですけど、2~5歳まで神戸市北区に住んでいましたからね。それもあってか、今でも北区のあたりを車で走ると落ち着くし、親しみも沸く。……ただ、チームには最近になってようやく慣れてきました(笑)」

―加入前に抱いていた印象と、9カ月間で体感した神戸はイコールでしたか? 「敵チームとして対戦している時からポテンシャルの高い選手が多いと思っていたし、それは今も変わらない印象です。ただ、ポテンシャルって、どれだけ高くても、発揮できなければ持っていないのと同じですからね。そこはこのチームの大きな課題なのかな、と。すなわち、個々が持っているポテンシャルをもっとプレーで発揮できるようになれば、チームとしても、もっと高いレベルで戦えるチームになると思う」

―ポテンシャルを発揮し切れていない理由をどう考えますか? 「いろいろありますが、結局は『個』に問題があるんじゃないか、と。個々のメンタルが安定しないから、持っている力を出せる試合と出せない試合が出てきてしまう。しかも、その個の不安定さがチームの不安定さにつながってしまって、いい時と悪い時の波が大きい。上位を争うチームの選手ってブレが少ないし、調子が悪くても悪いなりに踏ん張れる力があるけど、ヴィッセルの選手は調子が悪ければ、そのとおりのパフォーマンスになってしまい、調子の悪さを自分で修正することができない。サッカーに限らず、人間って調子がいい時は放っておいてもいい結果を出せるけど、本当の意味で真価が問われるのは調子がよくない時ですからね。そこで何ができるか、いかにその期間を短くして乗り越えられるか。そうした強さを個々が身につけられるようになったら、絶対に今の順位では戦っていないと思う」

―小川慶治朗選手や森岡亮太選手、岩波拓也選手らは安田選手の言う『ポテンシャルを秘めた選手』の象徴的な選手だと思いますが。 「間違いないですね。ただ、僕から見れば、彼らのポテンシャルはまだまだ薄っぺらい。例えば、タクはかなり高いポテンシャルを持った選手だけど、残念ながらそれがフルで発揮できている試合は半分もない。パフォーマンスが安定しないし、いろいろな意味でフワフワしていますしね。本来、U-22日本代表の不動のDFなら、チームでもJリーグのベストイレブンを獲得するくらいの守備力や安定性を示せてもおかしくないし、でなければ、世界でも戦えないと思うけど、今はまだそのレベルにない。その理由を彼はもっと突き詰めていかないと、今のまま『岩波選手はポテンシャルが高かったのにな……』で終わってしまう。……という厳しいことを僕がなぜ言うのかといえば、僕自身、若い時はペラペラの薄っぺらい選手だったから(笑)。試合にはプロ2年目からコンスタントに出場していたけど、当時は勢いだけでした。ただ、幸運にも僕の周りにはすごくいい先輩がいましたから。うまく気持ちが乗っていかない時や、パフォーマンスが安定しない時に、あえて厳しく接してくれたり、優しく声を掛けてくれる人がいた。そうやって監督やコーチ、先輩選手に飴とムチを使い分けてもらいながら育ててもらったことで、早い段階から自分がこの世界で戦っていくことに対する気持ちの芯みたいなものを備えることができた。その経験があるだけに……若い選手にも、つい厳しいことを言いたくなるんだと思います」

―確かに、当時はよく他の先輩選手に怒られていましたよね(笑)。 「ピッチの内外でキレられまくり、怒られまくりでしたよ! まあ、当時は僕も若く、心の中では正直『何を言っとるねん!』と思っていた時期もありましたけどね(笑)。でも、結局いろいろなことを経験している人の言葉って正しいことのほうが多いですから。若いがゆえに、それを素直に認められなかったりもするけど、やっぱり経験は嘘をつかない。ならば、言われることを素直に受け入れて、自分の肥やしにしたほうが間違いなく成長のスピードを早められると思う」

―そういう意味では若い選手のみならず、チーム全体がもっと『成長』を求める必要がある、と? 「それはヴィッセルに限らずだと思います。どれだけ強豪チームでも、それを求め続けなければステップアップしていくことはできない。ただ、ヴィッセルは特に、ここだけで育った若い選手が多いからこそ、キャリアのある選手がもっと自分の考えを伝えていくことは必要かもしれません。なぜなら、ヴィッセルの若い選手は、ここで起きていることがサッカー界の常識だと勘違いしていることが多いから。でも、ヴィッセルの常識は、サッカー界の常識では決してないですからね。ましてや『世界』のスタンダードには程遠い。でも、見たことのない世界を感じて変わっていこう、と言ってもそれは難しいですからね。だからこそ、僕を含めていろいろなチームでプレーしてきた選手が自分の考えや経験を伝えていくことも必要だし、それは移籍してきた選手の役割だとも思う。だからこそ、僕ももっと言いたいと思っているけど……今シーズンはここまであまりにもケガが多くて離脱している期間が長かったから、説得力がないですよね(苦笑)」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.26[NOV.2015]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.26[NOV.2015]
  • 「MONTHLY MAIN CAST」(安田理大選手特集)
  • 安田編集長企画「WE LOVE MUSIC!」選手たちのプレイリストTOP5紹介!
    (相馬崇人、徳重健太、チョンウヨン、松澤香輝、山口真司)
  • 「ヴィッセル選手の絵しりとり」吉丸絢梓選手
  • 「VISSEL LAB」増山朝陽選手
  • 一日店長「ORE★TEN」高橋峻希選手(イーザッカマニアストアーズ)
  • 「セレチケ」でプチセレブ気分を満喫!(渡邉千真&奥井諒)
  • ヤマザキナビスコカップベスト4への軌跡 など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

安田理大

Profile
安田理大(やすだ・みちひろ)
両サイドを高水準でこなす実績豊富な元気印のサイドバック。ジュニア時代から育ったG大阪で数々のタイトルを獲得し、2010年にはフィテッセ(オランダ)に移籍。その後、磐田、鳥栖を経て今シーズンより神戸に加入。度重なる負傷からようやく復帰し、並々ならぬ決意で終盤戦に挑む。
1987年12月20日生まれ、大阪府吹田市出身、173cm/75kg