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ジュニアユースからヴィッセル一筋で育ってきた岩波拓也が、クラブ史上初めて五輪の舞台に立つ。
ケガを乗り越えてつかんだ五輪代表の座。若き守備リーダーは、改めて強い覚悟と責任を胸に刻んだ。
ともに戦った仲間、支えてくれたすべての人のために―。“神戸の宝”がリオで金色の輝きを見せる。

五輪メンバー選出は…ホッとしたと同時に、改めて責任感が芽生えた

―今週からチームに完全合流されました。 「長く感じましたね。でも周りの人に助けてもらったおかげで、順調に回復できたので良かったです」

―5月21日に行われたトゥーロン国際大会のパラグアイ戦で左膝を痛めてからの約1カ月半、どんな思いでリハビリに取り組んできたのですか? 「ケガを負ったその場で代表のドクターに診断していただいた際は、6〜8週間はかかりそうだと言われていて。8週間、つまり2カ月もかかるとなれば、オリンピックには間に合わないかもと言われていたんです。でも、僕としてはその時から6週間で治すつもりだったし、結果的にチームに戻って再度診察してもらったところ左膝内側側副靭帯損傷、受傷日から全治6週間と診断されました。そこからは『6週間で治してJリーグに出場できる状態に持っていければ、可能性はあるはず』という思いで、1日でも早く治すことだけを考えてリハビリに取り組んできました」

―早期回復のために心掛けていたことは? 「ケガをした直後から、似たようなタイミングで同じケガをした経験のある(小川)慶治朗くんに電話をしていろいろアドバイスをもらっていたし、元チームメイトの(田代)有三さん(セレッソ大阪)やイーニョくん(奥井諒/大宮アルディージャ)など、たくさんの方々が連絡をくれて、ケガにいいと言われていることを教えてくれましたからね。例えば、食事面で『ケガをしている時に焼肉を食べたら治りが悪くなる』と聞けば焼肉を食べないようにしたり(笑)。どんな小さなことでも『ケガにいい』と言われたことは全部やりました。また、ヴィッセルのメディカルスタッフにも協力いただき、本来は自宅に持ち込めないような大きな電気治療の器具を自宅にセットしてもらって、毎晩、寝る時に電気をあて続けました。そうやって僕を支えてくれた人たちの気持ちを思えばこそ、『こんなにもたくさんの人を巻き込んで選ばれなかったらどうしよう』と不安になることもありましたが、正直、選ばれない可能性はほとんど考えていなかったように思います」

―それは左膝の回復具合にも手応えがあったからですか? 「そうですね。6週間という診断が出てからは6月中にピッチに戻れる計算が立ったし、順調にリハビリも進んでいましたから。また、定期的に代表スタッフが状態を見に来てくれたり、時には映像でチェックしていると聞いていただけに、そこまでやってくれているのに選ばれないことはないだろうと(笑)。唯一、メンバー発表の前日だけは『もしかしたら外れるのか?』ということも考えました。でも、実はその日の夕方、昼寝をしていた時に電話が鳴って、しかも知らない番号だったからやや不機嫌な感じで出たら『手倉森です』と。もっとも、その時は選ばれる、選ばれないの話ではなく『足の状態はどうだ?』という確認の電話だったんですけどね。しかも『順調です』と答えたものの、あまりにも不意打ちだったから、あっという間に話が終わってしまい……電話を切ってから我に返って『もう少し、意気込んでおけばよかった』と後悔しました(笑)。でも、その電話で何となく落ち着いたというか。自分の口から直接、監督に現状を伝えられたし、あとは結果を待つしかないと腹をくくれた。それでその日もしっかり眠って翌日の午前練習に行ったら、トレーニングが終わった後にクラブの強化部の方に選出を伝えられました」

―改めて、その時の気持ちを教えてください。 「とにかく、いろいろな人に心配していただいて、サポートしていただいた中での選出でしたからね。これで周りの人たちを安心させられるという気持ちと、五輪出場はサッカー人生の目標の一つだっただけに喜びもあり……でも、やっぱりホッとしたというのが一番大きかったかな。と同時に、U-17日本代表から数えれば100人以上の同世代の選手と切磋琢磨しながらここまで戦ってきて、そこにはいろいろな選手の様々な思いがあるのも感じてきただけに、選ばれた僕はそういう仲間の思いもしっかり背負って戦わなければいけないという責任感も、改めて芽生えました」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.33[SEP.2016]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.33[SEP.2016]
  • 巻頭企画「前田編集長が選手の自宅を訪問!」レアンドロ選手、前田凌佑選手
  • 特集「FEATURE」岩波拓也選手
  • 「VISSEL LAB」高橋峻希選手
  • 「ヴィッセル選手の絵しりとり」松下佳貴選手
  • 「Roots」山口真司選手
  • 「いぶき日記ダイジェスト」 など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

岩波拓也

Profile
岩波拓也(いわなみ・たくや)
地元・神戸出身でアカデミー時代からヴィッセル一筋の生え抜き選手。卓越した守備力に加え、足元の高い技術と正確なビルドアップ能力も備える。大会直前での左膝のケガを乗り越えクラブ初の五輪代表メンバー入り。神戸の将来を担う若き守備リーダー。
1994年6月18日生まれ、兵庫県神戸市出身、186cm/72kg