ファンパーク

プロ17年目の今シーズン、
序盤戦は紅白戦にすら出場できない苦しい状況を味わった。
しかし、北本久仁衛は自分自信を見失うことなく準備をし続け、
一時はレギュラーの座を奪い返した。
キャリア初のタイトル獲得に向けて、「やるべきことをやり続ける」。
熱い闘志を燃やしながら―。

今は自分たちのサッカーに対して、期待感を持てている

―『Vスマ』での単独インタビューは2013年10月以来、約3年ぶりです。当時は腫瘍切除の手術をされた直後でした。 「あっという間の3年でしたね。ただ、僕自身は何も変わっていない気がします。体のほうは今も半年に一度は定期検診に行っていますが、もはやルーティーンワークのような感覚で、特に意識するものではなくなっています」

―3年前から変わったといえば、当時は「結婚願望が全くない」とお話しされていたのに、結婚をされたことでしょうか?(笑) 「確かに!当時、結婚願望がなかったのはウソではなく、あれから時間の経過とともに結婚願望が芽生えたというか、奥さんとの出会いの中で自然と結婚に至りました。これでようやく、当時から言われていたガクさん(近藤岳登/FC大阪)とのゲイ疑惑が払拭できます(笑)。それにしても、周囲には相当驚かれました。久しぶりに電話やメールをもらった人もたくさんいましたしね。代表的なところだと、バンさん(播戸竜二/大宮アルディージャ)からも電話をもらい、開口一番『何をしてんねん』と。バンさんは、30代の数少ない独身仲間でしたが、らしいツッコミをいただきました(笑)。でも、そうやっていろいろな人から祝福していただいてありがたい限りです。といっても、今はまだ入籍を済ませただけですからね。年末の引越しに向けて何かと準備はしているけど、まだ一緒に暮らしていないのであまり実感がないんです」

―今シーズンもすでに終盤戦です。ここまでの戦いについてはどんな手応えを感じていますか? 「シーズン当初は、ネルシーニョ監督も就任2年目で、監督のサッカー観やスタイルが浸透してきている手応えはあったものの、昨シーズンの中心選手であった(チョン)ウヨン(重慶力帆FC)や(森岡)亮太(シロンスク・ヴロツワフ)が抜けてしまいましたからね。正直、「どうなるのかな」という思いもありましたが、ここまでシーズンを戦ってきて感じるのは、逆に彼らが抜けたことで個々の選手がより責任感を増しながら組織的なサッカーができるようになったということ。実際、昨シーズンまでは良くも悪くも、ウヨンや亮太を頼ったサッカーをしていましたからね。もちろん、それが結果につながることもあったのですが、逆に頼り過ぎて攻撃が遅れたり、組織として機能できなかったりという反省も残った。でも今シーズンは、必然的に彼らを頼ることができない状況になりましたから。個々の役割を明確にしながらチーム全体の守備を整理した上で、彼らがいない事実をプラスに変えた戦いが徹底できつつある。それでも1stステージは失点が多かったですが、2ndステージに入ってからはその数も減りましたしね。今は自分たちのサッカーに対して、やればやるほど良くなっていくような期待感を持てています」

―ネルシーニョ監督のサッカーが浸透してきている証拠に、昨シーズンと比べて、ピッチ上で混乱が見られたり、組織として機能できずに終わる試合も随分減ったように思います。 「ネルシーニョ監督はもともと相手の長所を消すのがうまいというか……実際に、試合前のミーティングでも常々『相手の長所をしっかり消すことができれば、自分たちにチャンスがくる』という話をされていますし、そのことに対する選手の理解も深まっていますからね。それによって、ピッチ上で混乱してしまうような試合も確かに減った。それを如実に示したのが直近の2nd第14節の川崎フロンターレ戦です。立ち上がりに相手のビッグチャンスを(キム)スンギュがビッグセーブで防いでくれて流れを引き寄せられたのもありますが、ボランチの選手を中盤に4枚据えるという今シーズンでは初めての形で戦った中で、スタンドから観ていてもあと何点か取ってもおかしくないようなほぼパーフェクトな内容で勝利を引き寄せられた。しかも上位を争う川崎F相手にそういう試合ができたのは、自分たちのサッカーへの自信を膨らませてくれました」

―北本選手ご自身は序盤戦こそ試合に絡めなかったものの、ルヴァンカップグループステージ第5節ヴァンフォーレ甲府戦で今シーズン初先発を果たしたのを機に先発の座をつかみました。 「初先発の試合を完封勝利でスタートできたのは、個人的にはすごく大きかったです。というのも、毎年ポジション争いは覚悟しているし、それを勝ち抜かなければ試合に出場できないという自覚もありますが、今シーズンの序盤は、紅白戦にさえ出られないという、例年にも増して厳しい状況に追いやられていましたからね。それでもネルシーニョ監督は常々『いい状態の選手を使う』と話していたし、それを実践してきた監督ですから。試合に出る、出ないに関係なく常日頃から『やるべきことをやり続けよう』と取り組んでいたものの、思ったよりチャンスが来るのに時間がかかったというのが正直なところです。それだけに最初の試合に懸ける思いは強かったですし、絶対に勝つ、ゼロで抑えることを自分に課していた中で、その両方を実現できたのは素直にうれしかった。ただ、そうした思いを持ってピッチに立っていたのは僕だけではなく、例えば一緒にセンターバックを組んだ(高橋)祥平も、今シーズンはなかなか出場機会に恵まれていなかったですからね。試合前には2人で『この試合で魅せるぞ!』という声を掛け合ったりもしましたが、その祥平も含め、ピッチに立った全員の勝利に対する意欲が結果につながったと思います」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.36[NOV.2016]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.36[DEC.2016]
  • 巻頭企画「2016シーズン ヴィッセルアウォーズ!」
    渡邉千真選手、藤田直之選手
  • 特集「FEATURE」北本久仁衛選手
  • 「VISSEL LAB」松下佳貴選手
  • 「ヴィッセル選手の絵しりとり」松澤香輝選手
  • 「Roots」岩波拓也選手、前田凌佑選手
  • 「いぶき日記ダイジェスト」 など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

北本久仁衛

Profile
北本久仁衛(きたもと・くにえ)
2000年に加入以来、神戸一筋17年目。チームメイトからの人望も厚いセンターバックで、2nd第14節終了時点でリーグ戦14試合に出場。ハードなディフェンス、ヘディングの強さは衰え知らず。キャリア初のタイトル獲得へ熱い闘志を燃やしている。
1981年9月18日生まれ、奈良県奈良市出身、181cm/78kg