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そのサッカー人生にはいくつも転機があった。
守備面での能力を高めた中・高校時代。プロ入りを決意するきっかけになった
高校3年時のイングランド遠征、食事管理による体質改善。
そして、プレーできる喜びを再認識させられた病との戦い──。
それらの転機をステップとして、彼は今、自身のサッカー人生を心から楽しんでいる。

高校3年間で手に入れたサッカー人生の財産

 北本久仁衛が「サッカーの力」を思い知り、本当の意味で「プロ」を目指そうと思ったのは、高校3年の夏。初めてのイングランド遠征で、サッカーの聖地・ウェンブリースタジアムでのイングランド代表戦を観戦したのがきっかけだ。そこに漂うサッカー熱に、とにかく圧倒された。

「夏休みに部員20名ほどでイングランドに遠征し、地元の高校生チームなどと試合をしたんです。その時にイングランド代表戦を観戦する機会に恵まれて。当時はベッカムの全盛期で、その試合でもベッカムのクロスをアンディ・コールがヘディングで決めたんですが……その盛り上がりはすごかったですからね!他にも超満員のスタンドがちょっとしたプレーでドッと沸いたり、大きなため息が漏れたり。『サッカーは、ここまで人を熱狂させられるんだ』と肌で感じたことが、プロ入りを決意するきっかけになった」

 それまでは、ただサッカーに魅了され「うまくなりたい」一心で練習に明け暮れたサッカー少年だった。奈良県に生まれた彼とサッカーとの出会いは、カトリック系の幼稚園に通っていた時のこと。「みんなで仲良く遊びなさい」とクリスマスに神父さんから園児に贈られた小さなゴールマウスがきっかけだ。そのクリスマスプレゼントは、一瞬にして北本の心をわしづかみにした。

 その熱は小学生になっても冷めることはなく、小学2年の冬、彼は小学校のチーム、登美ケ丘サッカークラブに入部する。仲の良かった2歳上の兄と「同じチームでサッカーをしたい」という思いもあってのことだった。 「小学生の時は体が大きいのを重宝がられ、試合では状況に応じてDFとFWの両方でプレーしていました。でも、僕としては守るほうが好きでしたね。ある試合で兄と同じチームでDFをしたのが楽しく『またお兄ちゃんとDFを組みたい』と思ったことが影響しているのかも知れない」

 その小学生時代は、監督がサッカー経験者ではなかったこともあり、サッカーを楽しむことに重きが置かれていたが、彼自身は奈良市トレセンに選ばれるなど少しずつ頭角を表し始める。加えて、小学6年時にはJリーグが開幕。大好きなジーコのいる鹿島アントラーズのレプリカユニフォームを着て練習に行くこともあったそうだ。その中では、子供ながらに「僕もずっとサッカーをしていたら、いつかJリーグで試合ができるかも」と考えるようになった。

 そんなふうにして少しずつ膨らんでいった「サッカー」への夢をより現実に近づけたのが中学・高校時代だ。奈良市立登美ケ丘中学校サッカー部に入部し、初めて本格的な指導を受けるようになると、サッカーの楽しさも少しずつ形を変えていく。

「中学生で本格的な指導を受けるようになり、できるプレーが増えていったり、うまくなっていく自分を実感することに楽しさを覚えるようになりました。また、当時、望月実監督によく言われていたのが『もし目の前の敵にやられそうになったら、ユニフォームを引っ張ってでも止めろ。でも、そんな止め方をしたら恥ずかしいだろう? だから、次からは正当に相手を止めるにはどうすればいいのかを考えろ』ってこと。単に相手に競り勝つだけではなく、考えてプレーする習慣を身につけました」

 また冬の高校サッカー選手権大会への憧れから進学を決めた奈良育英高での3年間は、より技術、メンタルの両面を鍛える時間に。日常生活まで管理されながら、厳しい練習に明け暮れた毎日の中で、彼は規律や監督から求められることを素直に受け入れながら成長を続けた。

「高校3年間は、これまでのサッカー人生で一番厳しい時間だったけど、プレーや私生活、また挨拶ひとつとっても、『当たり前のことを当たり前にすること』の大切さを学んだことは、僕の財産になりました」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.07[NOV.2013]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.07[NOV.2013]
  • 都倉賢選手インタビュー
  • 「今月の男:北本久仁衛」(北本久仁衛選手特集)
  • タシロの部屋
    (田代有三選手が田中英雄選手&植草裕樹選手をゲストに迎えた対談)
  • 相馬崇人の欧州名手探訪(相馬選手の目線でおススメの欧州名手を紹介)
  • ヴィッセル神戸×ジェットネイル(吉田&小川選手のドキドキネイル体験)
  • 神戸トヨペットの西村社長が森岡亮太選手を激励訪問! ほか

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

小川慶治朗(おがわ・けいじろう)

Profile
北本久仁衛(きたもと・くにえ)
ヴィッセル一筋14年目を迎えた鉄人センターバック。昨季はJ1通算300試合出場を達成した。 ピンチの芽を摘む危険察知能力や体を投げ出したシュートブロックはもはや芸術の域。今年の1月に肋骨に腫瘍が見つかり、切除手術を余儀なくされ長期離脱したが、強靭なメンタリティと情熱で復活を果たした。
1981年9月18日生まれ、奈良県奈良市出身、181cm/78kg