ファンパーク

現役生活最後の試合を2日前に控え、
吉田孝行は貴重な時間を割いてインタビューに応じてくれた。
引退直前の想い、プロ生活の思い出、後輩に宛てた現役最後のメッセージ──。
キャリア19年間が凝縮された言葉すべてに、耳を傾けてほしい。

生活のリズムに何ら変化がないせいか、今一つ実感が沸かない(笑)

10月24日に正式に引退を発表されました。改めて引退を決意した理由を聞かせてください。
「19年間、プロとして戦ってきて、今シーズンほど試合に出ないシーズンは初めてでしたから。横浜フリューゲルスでの2年目もリーグ戦には2試合しか出場できなかったけど、ベンチには常に入っていましたしね。そう考えても今シーズン、出場はおろか、サブメンバーにもほとんど絡めていない現実から目をそらすわけにはいかないなと。

もちろん心のどこかで「まだやれるかもしれない」と思う瞬間はあるんですよ。でも、プロサッカー選手なら誰しもそういう自信を抱きながら引退していくようにも思うし、逆にヘトヘトになるまで、現役にしがみつくことも僕としては考えられなかった。

ただ、引退を発表しても、毎日の生活のリズムには何ら変化がないせいか、今一つ実感が沸かない(笑)。もしかしたら来シーズンが始まって、『もう練習に行かなくていいのか』という現実に直面した時にようやく引退を実感するのかもしれません」

チームメイトは皆さん、一様に寂しそうです。
「社交辞令かもしれないけど(笑)、それはうれしいですね。特に今週に入って、トレーナーの岸本さんに尽力していただいたおかげで痛めていたふくらはぎが劇的に回復し、チームの練習にも合流できたせいか、チームメイトから温かい声を掛けてもらって。

『絶対に最終戦は出場してください』とか『タカさんに全力でアシストします』とか、中には『もしタカさんがメンバーに入らなくて、僕が入ったら、自分を外してでもタカさんを入れてほしいと監督に頼みに行きます』って言ってくれる選手もいる。それがいいか悪いかは別として、彼らの気持ちがすごくうれしかったし、そういう仲間とラストシーズンを戦えて良かったと心から思います」

実は今回、そんなチームメイトから「これだけは聞いておきたい!」という質問をいくつか預かってきたので、順にお答えください。
まず、北本久仁衛選手から。「19年の現役生活で一番辛かったことは?また、その経験は後のサッカー人生にどんな影響を与えましたか?」

「いろんなことがあったけど、一番辛かったのはやはりフリューゲルスの消滅です。プロ4年目のシーズン終了を前にいきなり『チームがなくなります』ですから。あれ以上のショックは後にも先にもないし、裏を返せば、あれだけの辛い出来事を経験したから、その後のサッカー人生で何が起きても動じない自分がいた。

例えば大分や神戸で残留争いに巻き込まれた時も、「別に降格したところでチームがなくなるわけじゃない」って、いい意味で開き直ることができたから、いつも通りの力を出せてきたように思う」

次は田中英雄選手から。「奇跡の残留を決めた2010シーズンの『一体感』はタカさんのキャリアでも特別なものだったのでしょうか?」
「2010年は僕の記憶に深く残るシーズンでした。と同時に、あの終盤、英雄も感じたはずの『一体感』はやはり特別でしたね。

ただ、あそこまでの一体感をチームとして備えられたのは終盤戦、苦しい戦いが続いた中で開いた選手だけのミーティングにあったからだと思っています。そこで個々の選手が自分が思っていることを素直に……泣きながらでも訴えたことで一つになれた。プロの世界に生きていると、学生時代のように、本気で気持ちをぶつけ合ったり、怒鳴り合う、泣き合うことがなかなかできないですからね。

でも、あの時はその殻を破って泣きながら気持ちをぶつけてくれた選手がいて、その気持ちがみんなに届いたから、他の選手も気持ちをさらけ出すことができた。その中で、僕を含めた誰もが「神戸のために」という気持ちを持てたことが、あの一体感につながったんだと思う」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.09[JAN.2014]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.09 [JAN.2014]
  • 2013シーズンプレイバック[J1復帰への道のり]
    (2013シーズンのキーポイント、J1復帰までの9ヵ月カレンダー、
    プレイヤーズ・インタビュー、選手がチョイス!2013シーズンBEST)
  • 吉田孝行選手引退記念特集 -ありがとう、タカさん!-
    (引退記念インタビュー、ラストマッチ密着フォトギャラリー、引退記念フォトギャラリー、ラストインタビュー)
  • 「2013ファン感謝デー&市民交流会」レポート など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

吉田孝行(よしだ・たかゆき)

Profile
吉田孝行(よしだ・たかゆき)
滝川第二高を卒業後、95年に横浜フリューゲルスに加入。1年目からアジア王者に導くゴールを挙げる等の活躍を見せ、クラブ消滅で最後の試合となった第78回天皇杯決勝でもクラブ最後のゴールを決めて優勝に導く。その後、横浜FM、大分、再び横浜FMを経て08年に神戸に加入。2010年にはチームを残留に導く活躍を見せた。ここ一番でゴールを決める「勝負強さ」が光る選手。2013年を以ってユニフォームを脱ぎ、現役を引退。
1977年3月14日生まれ、兵庫県川西市出身、174cm/67kg