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「武士のような境地で」と表現したとおり、背番号21のアタッカーは真っすぐに己と向き合いながら黙々とトレーニングに励んでいる。すべてはピッチで結果を残すため。そして、ヴィッセルの勝利に貢献するため。「試合で勝つ姿を見せていくしかない」。確固たる決意を胸に、田中順也は高みを目指し続ける。

厳しさがないと、本物の力は積み上がっていかない

―ヴィッセル神戸での2シーズン目となった昨シーズンを、個人的にはどのように振り返りますか? 「総体的にはベテランと呼ばれる域にも突入した中で、チームに対して何がプラスになるのか、目標としている場所に到達するには何が必要かを日々考えながら過ごした1年でした。チームというのは年間を通したパフォーマンスが結果になり、評価になると考えればこそ、全員が同じ方向を向いて、自分たちのサッカーを信じて全うすることが大事になりますが、一方で、ただ単に信じて続けていれば結果が出るわけではないですからね。必要な変化はどんどんエッセンスとして加えていかなきゃ成長も、結果も望めない。だからこそ、信じることと変化をつけることの両方に折り合いをつけながら進んでいくべきだと思うのですが、その部分において、少しチームとしてスムーズにいかなかったこともあったな、とは感じました。また個人的には前半戦は、タカさん(吉田孝行前監督)にコンスタントに起用してもらったにもかかわらず、2得点1アシストという数字しか残せなかったのは申し訳なくもあり、課題としても残りました。とはいえ、チームの成績としては前半戦で6位まで順位を上げることができ、その後も、一時は4位にまで上り詰めることができたと考えれば、そこまで悪い出来ではなかったのかなとは思っています。それだけに、やはり個人としての結果ですよね。前半戦でもっと目に見えた数字を残せていたら後半戦の自分自身の稼働率も変わっていたんじゃないか、とは思います」

―チームへの献身性、貢献度という点では手応えを感じられたところも多かったのではないですか? 「確かにそれはありましたが、本当にいい選手というのは、チームへの貢献を見せながら自分も得点を取ってチームを勝たせられる選手だと思うので。そこは僕に足りない部分だと受け止めています」

―後半戦はメンバー外になることも多かったですが、どんなことを考えながら過ごしていたのでしょうか? 「チームとして結果が出ない時期が続いて、場合によっては降格もあるという順位まで成績が落ち込みましたからね。もちろん『どうにかこの状況を打開したい。そのための力になりたい』という思いはあったし、でも思うように試合に絡めないジレンマもあったというのが正直な気持ちです。ただ、サッカーはチームでの戦いですから。毎日、気持ちを落とさずに、でき得る最高の準備をして、試合に出られないことが決まったら『監督の決断を信じるしかない。自分はまた気持ちを落とさずに準備を続けよう』ということに集中していました。なぜなら、こうした葛藤もサッカーの一部だと思うからです。ああいった状況に置かれた時にどう振る舞えるか、自分を保てるかは、選手として乗り越えなければいけないことで、結果、自分の芯の部分が揺らぐことなくシーズンを終えられたことで積み上げられた収穫もあったと思っています」

―昨年も選手の入れ替わりが多く、シーズン途中に監督も交代するなど、いろいろな変化が見られました。ああいった状況に置かれた時に、選手は現状にどう向き合うべきだと感じましたか? 「簡単に言うと、変化に強くなるしかないな、と。変化に惑わされないための選手としての強さ、信頼を備えなければいけないとも思ったし、もしかしたら経験を頭から捨てることも必要かな、とも感じました」

―「経験を捨てる」とは? 「例えば僕なら、J1リーグで優勝した経験が自分の中に色濃く残っている分、自然とそれを基準にして『優勝するにはこれが必要だ』、『こうしたほうがいい』と考えちゃうと思うんです。選手同士、あるいはスタッフと選手の信頼関係はもちろん、チームとしての安定感、そこに注ぎ込む熱量がどれほどたくさん必要になるのかなど、経験による固定観念があるから、そこから外れそうになると『こうじゃない、ああじゃない』と考え過ぎてしまう。でも、優勝する方法にセオリーなんてないですからね。であるなら、とにかくクラブ、チームを信じて、監督、仲間を信じて『これが結果につながる方法なんだ』とやっていくしかない。そういう意味では経験ってすごく大事なものである一方で、時に自分の邪魔になることもあるかもしれないな、と感じました」

―それは今年の『結果』を求める上でもキーの一つだと考えますか? 「そうだと思います。ただ、だからと言って、何でもOKなのかといえばそうじゃないというか。例えば、このチームには本当の意味での『勝ち癖』が備わっていないからこそ、練習試合でも紅白戦でも、チームとして『負けること』をなくしていくことはやっぱり必要だと思うんです。この時期にはよく『プレシーズンだから負けても大丈夫』、『大事なのはJ1リーグが開幕してから』という言葉を聞きますが、それは勝ち癖のついているチームに許されること。それがないチームは、普段の練習からもっと勝つことにこだわって、勝つことを当たり前にしていかないと、公式戦でも勝てなくなってしまう。だからこそ、このチームは負けたことに対してもっと真剣に考えるべきだし、ミスが起きた原因を追究すべきだとも思う。極端な話、当事者を名指しで指摘するくらいの厳しさがないと、本物の力は積み上がっていかないですしね。それを選手同士でもっと突き詰め合えたら、チームとしての力ももっと膨らんでいくんじゃないかと思っています」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.55[APR.2019]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.55 [APR.2019]
  • SPECIAL CROSS TALK/
    「ヴィッセルを、高みへ」ダビド ビジャ選手×アンドレス イニエスタ選手
  • 秘蔵PHOTO COLLECTION/藤谷壮選手
  • VISSEL SMILE SPECIAL ISSUE/田中順也選手
  • SPECIAL INTERVIEW/小川慶治朗選手
  • NEW FACE INTERVIEW/初瀬亮選手、西大伍選手、伊藤元太選手、小林友希選手
  • USAツアー&沖縄キャンプレポート
  • ダイヤの“裏”いぶき日記/前川黛也選手 など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

田中順也

Profile
田中順也(たなか・じゅんや)
左足から繰り出す強烈なシュートを最大の武器とする元日本代表FW。過去には柏でJ1優勝を経験。ポルトガルの名門スポルティングでプレーするなど、チーム屈指の豊富な経験を持つ。ヴィッセル加入3年目のシーズン、チーム浮上のカギを握る一人としてどん欲に結果を追い求めていく。
1987年7月15日生まれ、東京都板橋区出身、181cm/75kg

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